家庭で挑む タイ風エビすり身揚げと和素材の融合:大葉と梅肉のアレンジ挑戦記
家庭で挑む タイ風エビすり身揚げと和素材の融合:大葉と梅肉のアレンジ挑戦記
日々の食卓に新しい風を吹き込みたいという思いから、様々な国の料理を組み合わせるフュージョン料理に挑戦しています。今回は、タイのエビすり身揚げである「トートマンクン」をベースに、日本の身近な和素材である大葉と梅肉を組み合わせた新たな揚げ物に挑戦してみました。
タイ料理の「トートマンクン」は、エビのプリプリとした食感とタイ特有のスパイスやハーブの香りが特徴的な一品です。これを日本の家庭で再現しつつ、さらに和の要素を加えることで、どのような味覚が生まれるのか、非常に興味がありました。
今回の挑戦メニューと着想
今回挑戦したのは、タイのトートマンクンに、刻んだ大葉と梅肉を混ぜ込んで揚げるフュージョン揚げ物です。タイの爽やかな香味野菜の香りに、大葉の清涼感と梅肉の酸味とコクが加わることで、どのような化学反応が起こるのか。揚げ物でありながら、さっぱりといただける可能性も感じました。
この組み合わせを思いついたのは、日本の揚げ物、特に天ぷらやかき揚げに大葉が使われることが多い点、そしてエビと大葉、梅肉の組み合わせが和食において定番であることからです。異なる食文化の中で「エビをすり身にして揚げる」という共通点があり、そこに和のアクセントを加えることで、新たな美味しさを引き出せるのではないかと考えました。家庭で手軽に作れるエビ料理のレパートリーを増やしたいという意図もあります。
材料と下準備
家庭で作りやすいように、特別な材料は極力使わないように配慮しました。
材料:
- むきエビ: 200g (冷凍でも可)
- 卵白: 1個分
- 片栗粉: 大さじ2
- ナンプラー: 小さじ1
- 砂糖: 小さじ1/2
- (タイの)レッドカレーペースト: 小さじ1/2〜1 (辛さはお好みで調整)
- レモングラス(みじん切り): 少量 (またはレモンの皮のすりおろし少量で代用)
- インゲン(細かい輪切り): 2本分 (またはスナップエンドウなど)
- 大葉(みじん切り): 5〜7枚
- 梅肉: 大さじ1/2〜1 (叩いた梅干しや市販の梅肉ペースト)
- 揚げ油: 適量
下準備:
- むきエビは背わたを取り除き、キッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取ります。一部(1/3程度)は粗みじんに、残りは包丁で粘りが出るまで叩いてすり身状にします。フードプロセッサーを使用しても良いですが、手で叩くことでよりプリプリとした食感になります。
- ボウルにすり身状にしたエビ、粗みじんにしたエビ、卵白、片栗粉、ナンプラー、砂糖、レッドカレーペーストを入れます。
- レモングラス、インゲン、大葉、梅肉も加え、全体が均一になるまで手でよく混ぜ合わせます。粘りが出てまとまるまでしっかりと混ぜるのがポイントです。
挑戦プロセス
生地の準備ができたら、いよいよ成形して揚げていきます。
- 混ぜ合わせた生地を、厚さ1cm程度の小判形に成形します。手に少し油をつけると成形しやすくなります。今回は家庭で揚げやすいように、直径5〜6cm程度にしました。
- 揚げ油を170℃に熱します。生地を油に入れる前に、一つまみ落としてみて、すぐに浮き上がってくる状態が目安です。
- 成形した生地を静かに油に入れます。一度にたくさん入れすぎると油の温度が下がるため、鍋の大きさに応じて数を調整してください。
- 片面がきつね色になったら裏返し、両面がきつね色になり、中まで火が通るまで揚げます。おおよそ片面2〜3分程度です。
- 揚げ終わったものは油を切ってバットに取り出します。
挑戦中の工夫と注意点:
- エビのすり身は、粘りが出るまでしっかりと混ぜることで、揚げた時にバラけにくく、プリプリとした食感になります。
- レッドカレーペーストの量で辛さや香りの強さが変わります。初めて作る際は少量から試すのが良いでしょう。
- 大葉と梅肉は、混ぜすぎると風味が飛びやすいかもしれないと考え、生地の最後に加えてさっくり混ぜ合わせるようにしました。
- 家庭での揚げ物は油の温度管理が重要です。温度が高すぎると表面だけ焦げて中が生焼けになり、低すぎると油っぽくなります。調理温度計があると便利です。
もし失敗したら:
もし生地が柔らかすぎて成形しにくい場合は、片栗粉を少量ずつ加えて調整してみてください。また、揚げている途中でバラけるようなら、火を通す前に冷蔵庫で少し冷やして生地を落ち着かせると良いかもしれません。
挑戦を通じての発見や難しさ
エビのすり身に粘りを出す作業は、予想以上に力がいることが分かりました。フードプロセッサーを使うと楽ですが、手で叩く方がエビの繊維を感じられ、食感に繋がりやすいと感じました。
また、大葉や梅肉といった水分を含む和素材を混ぜ込むことで、生地の固さ調整に多少の試行錯誤が必要でした。タイのスパイスと大葉、梅肉の香りが加熱によってどのように変化し、調和するのかを想像しながら調理するのは面白いプロセスでした。
家庭での揚げ物は、少量の油で揚げるため、油の温度が変動しやすいという難しさがあります。揚げムラを防ぐために、一度に揚げる量を調整することが大切です。
出来上がりの評価
揚げたてのフュージョン揚げ物を試食しました。
見た目はタイのトートマンクンに近いですが、大葉の緑がところどころに見え隠れします。一口食べると、最初にエビのプリッとした食感と風味が広がり、その後にタイのスパイスの香りが追いかけてきます。そして噛みしめるほどに、大葉の清涼感と梅肉の爽やかな酸味とコクが顔を出します。
予想以上に、タイの風味と和の風味が自然に調和していました。特に梅肉の酸味が、揚げ物特有の重たさを軽減し、さっぱりとした後味にしてくれているように感じました。これは新しい発見です。タイ風の甘辛いスイートチリソースにも合いますが、大根おろしとポン酢で和風にいただくのも、また違った美味しさがありました。
アレンジの可能性や発展形
今回の挑戦から、いくつかのアレンジや発展形が考えられます。
- 他の香味野菜: 大葉の代わりに、刻んだネギやミョウガなどを加えても面白いかもしれません。
- 他の和素材: 蓮根やゴボウを細かく刻んで混ぜ込むことで、食感にアクセントを加えたり、より和風の風味を強調することも可能です。
- 他の魚介類: エビだけでなく、イカのすり身や白身魚のすり身と組み合わせても良いでしょう。鶏ひき肉を少量加えることで、よりジューミーな食感になるかもしれません。
- 調理法の変更: 揚げる代わりに、少量の油で焼いたり、蒸したりする調理法も考えられます。ヘルシーに仕上げたい場合に試す価値がありそうです。
- 衣のバリエーション: 米粉を使ってよりサクサクとした衣にしたり、パン粉をまぶしてカツのような食感にしたりすることも可能です。
この料理の背景にある文化的な考察
タイのトートマンクンは、家庭や屋台で広く親しまれている料理です。エビをすり身にして揚げるという調理法は、アジアの様々な国で見られます。日本では、薩摩揚げやはんぺんのような魚のすり身を使った練り物、あるいはエビを使った真薯(しんじょ)などがあり、素材をすり潰して加工するという点では共通する食文化が存在します。
また、揚げ物文化もそれぞれの国で独自に発展しています。タイの揚げ物は比較的あっさりしているものが多い一方、日本の天ぷらは衣の軽さやサクサク感が特徴です。今回のように、タイのすり身技術と日本の香味野菜や調味料を組み合わせることは、互いの食文化への理解を深めながら、新しい味覚の世界を切り拓く試みと言えるでしょう。異なる文化の要素を尊重しつつ、創造的に組み合わせるのがフュージョン料理の醍醐味です。
全体のまとめと学び
今回のタイ風エビすり身揚げと和素材のフュージョン挑戦は、予想以上に美味しく、新しい発見のある経験でした。タイのスパイスの香りと大葉・梅肉の清涼感が絶妙に調和し、揚げ物ながらもさっぱりといただける一品となりました。
フュージョン料理は、異なる文化の食材や調理法を組み合わせることで、思いがけない美味しさが生まれる面白さがあります。今回の挑戦を通じて、家庭で手軽に手に入る身近な食材でも、少し視点を変えるだけで新しい料理が生まれることを改めて実感しました。
今後も様々な国の料理と日本の食材を組み合わせることで、家庭の食卓に新しい刺激を取り入れていきたいと考えています。